天使はワガママに決まってる

「…せな…っ」


何が起こったのか、分からない。


何故瀬那が飛び出して行ったのか、
何故、あんなに――

泣きそうな顔をしていたのか。


僕はただ呆然と、走っていく瀬那の
後ろ姿を見つめたまま
教室の扉の前でとどまっていた。


「お……おい、エル…」
「大丈夫なのか?追いかけたほうが…」


周りのクラスメイトが、おろおろと
僕に声をかける。

あんな風に感情を表に出した瀬那を見たのは、
初めてだったから。


みんなそう言うけれど、
僕、家に帰ってくるなって言われたんだよ?
追いかけていいの?
瀬那はそれを望んでるの?


「僕……どうしたらいいんだろう…。」


思わずそう呟いて、頭を抱えた。

人間じゃないのに、
脳の部品がショートしてしまいそうに痛い。

胸が――苦しい。


「瀬那、何で――…?」


悲しませるつもりは無かった。
いつも瀬那は「学校では従兄弟!」って言ってた。
だから、そう言っただけなのに。

――僕は、


今まで何て言ってたんだっけ――?


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