天使はワガママに決まってる
自分でも、忘れてしまった。
ロボットなのに。
「僕、瀬那を悲しませちゃったのかな。」
泣きたいけれど、涙も出ない。
余計に胸が苦しくなる。
あの、瀬那の悲しそうな顔が
目の奥に焼き付いて離れない。
あんな顔を――させるつもりでは無かった。
させたく、無かった。
「なぁ、エル。」
「ん?」
先ほどまで一緒に話していたクラスメイトが、
心配そうに僕の肩を叩く。
「お前にとっては大切な……家族なんだろ?
きっと、お前が探しに来てくれるの
待ってんじゃねーの?」
隣にいた他の男の子は、あの安曇がまさかなー
などと言っているけれど
僕の耳には届かなかった。
「そうかな…。瀬那、待ってるかな…!」
思わず声が弾む。
やっぱり、追いかけなきゃ駄目だ。
瀬那は帰ってくるなって言ったけど、
僕は――瀬那のあんな顔、見たくない。
あんな、寂しそうな顔をさせるために、
僕は生まれてきたんじゃない――
今、僕の中には瀬那に対する
”家族”以上の、おかしな気持ちが生まれていた。
それが何なのか分からないけれど、
とてもとても、瀬那が愛しい。
……愛しい?
その意味さえも理解していないロボットなのにね。