天使はワガママに決まってる
学校から飛び出したころからは
随分小雨になった雨が、
私の涙も攫って行った。
――あの後のことは、
もうほとんど覚えていない。
私の頭の中では、グルグルグルグルと
さっきのエルの言葉が巡って
まるで脳内の思考回路を壊すかのように
言葉と光景が、恐ろしいほどリアルに蘇ってくる。
”瀬那はただの従兄弟だからさ”
無表情のまま、
頬を伝う涙も拭わずにただ目の前だけを見つめた。
いつからかずっと降りしきっている雨のせいで、
少し荒くなった川の流れ。
この濁流に、この濁った気持ちも思い出も
全部全部洗い流して欲しかった。
「ハァ……。」
もう何度目になるか分からない溜息を吐きながら、
私は虚ろに
手元の小石を川に放り投げる。
――学校を飛び出した私は
家に帰ることも億劫になって、
フラフラと無意識に街を彷徨っていた――
はずだ。
ところが、ハッと気が付いたときには
全く知らない土手を歩いており、
看板に目をやっても、知らない地名が書かれているだけ。
いわゆる、迷子になった。