天使はワガママに決まってる
「帰ろっ!」
エルが、タイミングを見計らったかのように
私の手を握って、言った。
まるで奇跡のように私を見つけてくれたエルに
心から感謝する。
エルがいなければ、きっと私は
家に帰れなかったかもしれないのだ。
――ありがとう。エル。
私はそんな意味を込めて小さく微笑むと
エルの手を握り返し、立つ。
長時間この場所にいたからか、
ポタポタと制服のスカートから水滴が落ちる。
「帰ろう。」
私たちは手を繋いだまま、
橋の下から一歩を踏み出す。
小さな街灯が、私たちを照らした。
――それから、土手沿いの道を
私たちは無言で歩く。
いつの間にか繋いでいた手は離れていて、
私が少しエルの後ろ。
横目でちらり、とエルを見ると
彼はただ嬉しそうに前を向いていた。
私はただずっと前に伸びる土手の道を見つめる。
そんな中、 ふいにエルが口を開いた。
「ごめんね…」
もう何度目なのか分からない謝罪の言葉。
エルは軽く後ろの私を振り返って見つめた。
こんなに謝られると、私の居心地が悪い。