天使はワガママに決まってる
それから私は毎日
窓からグラウンドを覗いて、
サッカー部を見つめている。
楽しそうな雰囲気を見ているだけで
私も何だか楽しくなって、
いつもならすぐに帰宅していたのに、
半年前からずっと放課後残っていた。
「タオルとか、渡せたらいいな……」
そう思い、毎日洗濯された
ふわふわのタオルを握りしめてはみるものの
2階の教室の窓から彼までの距離が遠い。
「まーた見てるのっ?」
「わぁっ…!何だ…紗代ちゃんか。」
「何だとは何よー。」
突然背後から肩を叩かれ、
思わず肩があからさまに跳ねる。
バクバクと心臓を鳴らしながら振り返ると、
私の数少ない友達の紗代(サヨ)ちゃんがいた。
私の言葉に口を尖らせつつ紗代ちゃんは
私と同じように並んで窓の外を見やる。
教室には既に夕日が差していて、
私たち2人以外誰も残っていない。
「楽しそうねー。」
「うん…。」
紗代ちゃんには、夜久くんと同じ
サッカー部に彼氏がいる。
可愛くて性格も良くて、明るくて。
私の憧れの女の子。
男の子が放っておかないのも頷ける。
私も唯一紗代ちゃんには
夜久くんへの想いを言っている。
それを聞いて紗代ちゃんはやっぱり
いつもみたいに微笑んで、うんうんと
頷いてくれた。
「タオル、また持ってる。」
「うん。」
「渡してきたらいいのに。」
「無理だよ。」
私の手に握られたタオルを見て、
紗代ちゃんは軽く溜め息を吐いた。
それからポンポンと私の頭を撫でてくれた。