天使はワガママに決まってる
彼女はこうして、進級した始業式の朝に
クラス替えの掲示板を真っ先に見に行っては、
同じように毎年叫ぶ。
「何故コイツとまた同じなのだ」と。
永遠子はいつも心底嫌そうな顔をするが、
正直俺にとってはありがたかった。
ファーストキスを奪われたのも永遠子で、
俺の初恋を奪ったのも永遠子で。
中3の俺に未だ1人も彼女がいない原因も、永遠子。
つまり、俺はもう随分長い恋心を
彼女に対して抱いているのだ。
幼稚園のときの、5歳から。
”宮塚”と”光原”。
お互いにみ、で始まる苗字。
そのため班別行動も、席順も、
とにかくいつも一緒。
友達には「付き合ってんだろ」とは言われるが、
実際のところは全くそうではない。
そうなればいいな、とは思っているけれど
彼女の態度は幼馴染どころか下僕扱いだ。
まぁ、今の関係が嫌いではないのだが。
「…あのさ。もーいいよ宮塚は。」
「は?!俺だってもう飽きたよ!」
「だってどーせ修学旅行も宮塚と一緒の班だろ?
自然教室だってそーだったし。
あたしを開放してくれよぉ!」
毎年のことなので、俺たちは一緒に教室まで向かう。
その間も、永遠子はずっと「もー飽きた」ばかりを
連発していた。
……本人を目の前にして失礼だろ。
小さいときから一緒に過ごしてきたのに、
永遠子は俺のことを”宮塚”と呼ぶ。
昔は仁、と呼んでくれていたのに
いつの間にか変わってしまった。
俺だけが、永遠子。
切ないというか、悲しいというか。
「永遠子がいたら、俺に彼女が
いつまでも出来ないんだよねー。」
「はぁ?!そんなの、宮塚に魅力が無いだけですー。」
「うるせ。」
こんな憎まれ口ばかり、お互いに叩いて。
でもそう言う彼女にも
俺の知る限り今まで彼氏がいたことはない。
「俺と同じようなもんのくせに。」
「うるさい。」
そんなところは変わらない彼女に
ほっと胸を撫で下ろす自分がいた。