天使はワガママに決まってる
近すぎて、離れることがないから
想い続けてしまう長い恋。
あぁ、なんてピュアなんだ俺。
ようやくの思いで教室のある3階まで
辿りつくと、
どちらからともなく溜め息を漏らした。
あまりにもタイミングがぴったりで、
お互いに顔を見合わせるとフッ、と軽く笑う。
その顔があまりにも綺麗に見えて、
見惚れてたなんて言えない。
「あー…俺達何組だっけ。」
「C組ー。」
「そうそう…って突き当りかよ。」
まだまだ長く感じる廊下。
俺と永遠子はいつもの微妙~な距離を保ちつつ
隣を歩く。
ふと、俺の目の前の窓から
珍しく桜の花びらが1枚舞い落ちてきた。
……3階なのに。
「あ、桜。」
どことなく永遠子が嬉しそうに言ったものだから
俺は咄嗟に花びらまでスライディング。
キキーッと上靴の擦れる音が響く。
座り込んだ俺の手のひらの中には、
小さな小さな桜が握られていた。
「何ムキになって取りに行ってんのー!」
背後で楽しそうに笑う永遠子。
俺は憎まれ口を叩きながら立ち上がる。
何だかんだ言って、興味深そうに
俺の掌を見ようとする彼女は
やっぱり可愛い。
「ほら。」
俺の手の中には、ちゃんと花びらが
たった一枚ある。
それを見た永遠子は、似合わない幸せそう~な
笑顔を見せて、
手から桜を摘まみあげた。
「春だね。」