天使はワガママに決まってる
その言葉に、思わず私は口をポカンとあけた。
彼氏くんは、私が夜久くんに
恋していることを知らない。
それなのにも関わらず、何なのこの展開は。
私に言われた言葉なのに、何も返せなくて
ただコクコクと真っ赤な顔で頷く。
紗代ちゃんはニヤけた表情で、
私に小さくブイサインを向けた。
「夜久くーん!ひよ、いじめないでよーっ」
「なっ……!ちょっと紗代ちゃ、」
きっと今の私は夕日を反射して
茹でダコのようだろう。
そんな顔見せられなくて、
私は両頬を手で覆った。
私とは対照的に夜久くんは、
もちろん、というように笑ってくれて。
「じゃあ今からそっち行くね!
ほら、ひよも行こっ!」
「う、ううううん!!」
――どうしようどうしよう!
震える手で机の上の鞄を引っ掴み、
先に出て行ってしまった紗代ちゃんを追いかける。
紗代ちゃんにも彼氏くんにも、
心の底から感謝して、私は教室を後にした。
「あ、いたいた!」
下駄箱で靴を履き替え、丁度外へ出たところに
彼氏くんと夜久くんが待っていた。
部活のユニフォームから制服に着替え、
少し乱れた髪を掻く姿に、また顔が熱くなる。
――どうやら私は大分重症のようです。
「待った?ごめんねっ」
「いや、大丈夫。」
軽くそう声をかけ合うと、紗代ちゃんたちは
さも当たり前のように硬く手を繋いだ。
「さ、帰ろっか。」