天使はワガママに決まってる

「……宮塚?」


永遠子の声にハッと我に帰ると、
俺の頬には一筋の涙が伝っていた。
堪えていたはずの涙が、
静かに溢れだす。


「え?!どうしたの?!」
「や…何でもねぇ…。」


苦しい言い訳ということは、分かっているが
何で泣いているのか
自分でも理解できない。

永遠子は必死に堪えていたのに
俺が泣いてどうする!


「何泣いてんのよ…馬鹿…」


俺の涙に触発されたのか、
永遠子の瞳からもボロボロと涙が溢れた。

二人っきりの暗い公園で
もうきっと夜も遅い頃だろう。
折角のクリスマスイヴは、涙涙で終わりそうだ。


別に今日でお別れじゃない。
後三カ月はある。
でも、先の未来が見えた今は
寂しさばかりが積もっていた。

言うなら……今しかない。


「俺、永遠子のこと好きだった。」


涙を拭わず、
しっかり彼女の方を向いて俺は言った。

今度は永遠子が呆然と口を開けていて
涙も止まってしまったようだ。


幼い頃から抱いてきた想い。

近くて近くて、あまりにも近すぎて
言うタイミングさえ分からなくて
何と言ったらいいのかも、分からなくて。

けれどいざ言ってみれば、
伝えたかったことはあまりにも簡単だった。


”俺は彼女が好きなんだ”

ただ、それだけ。


言った今になって、
遅すぎるだろうと笑いたくなる。
そして俺の勇気のなさに呆れた。

でも、ちゃんと伝えられた。


「……それ、あたしに言ってんの?」
「永遠子以外、誰がいるんだよ。」
「っていうか、好きだった……って
 何で過去形?」
「いや、間違えた。過去形じゃない。
 現在進行形。」


あぁもう。
何言ってんだ俺。

今更恥ずかしくなって、頭を掻く。
穴があったら入りたいとはこういうことか。
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