天使はワガママに決まってる
いつも紗代ちゃんを見ているとはいえ、
あまり免疫のない私にとっては
紗代ちゃんと彼氏くんが手を繋いでいるのを見るだけで
頬が上気するのが分かる。
幸せそうな頬笑みを私に向けて、
紗代ちゃんは校門に足を進めた。
その仲のいい後ろ姿を眺めつつ
私と夜久くんは黙ってついていく。
「見てた?!俺、今日3本もシュート決めたぜ!」
「もっちろん見てたよ!カッコ良かった!」
「マジで?サンキュ。」
――ほんと、仲いいよなぁ……。
笑い声の絶えない2人の会話を聞きながら
私と夜久くんはとてつもなく微妙で、
半端な距離を保ちながら歩く。
前の二人はもうすでに自分たちの世界で、
私たちのことなど視界に入ってこない様子。
結局、私たちは一言も会話を交わさないまま
紗代ちゃんたちとの別れの曲がり角を迎えた。
「じゃあ、私たちはここで…!」
「夜久、ひなちゃん、また明日な!」
うん…、と私は力無く笑い、2人に手を振る。
紗代ちゃんは私に向かって軽くウインクをした。
きっと、”頑張れ”ってサインだね――…
と、脳内では理解していても
実行する勇気は出ない。
きっとこの後も喋らないまま、バイバイなんだろうな…
と、泣きたくなった。
折角のチャンスなのに。
「もう暗くなるし、気をつけてね!」
「う、ん。紗代ちゃんもね。」
「私は大丈夫よー!彼がいるしねっ」
そう言って紗代ちゃんは、私たちに手を振って
背を向けて歩いていく。