天使はワガママに決まってる
絶句した。
開いた口が塞がらないというのはこういうことか。
私はただ立ち尽くしたまま、
今にも零れおちそうな涙を堪えた。
「う…うそ、」
辛うじて口から出たのは、こればかりで。
本当に胸が張り裂けてしまいそうに苦しい。
息が、詰まる。
耳がさっきからぴくぴく動いて
今にも泣きだしそうなのを伝えていた。
――駄目だ。
今泣いたら絶対に駄目。
絶対に――それはしてはいけない。
「ほんとーだよっ!」
そんな私の心情も知らず、
原因である親友は、本当に晴れやかに笑った。
ほんのり朱に染めた頬を両手で包み込むようにして、
嬉しそうに微笑む彼女が、本当に憎くて仕方がなかった。
でも、そんなこと言えない。
今すぐ逃げ出したいのに、足はまるで石で。
彼女の頬をビンタしてやりたいのに、
私の臆病な手は、ピクリとも動かなかった。
「あたし、」
ヤダ――
言ワナイデ。
「俊くんと、付き合うことになったの!」
ギュッ、と目を瞑ってしまったら
涙が零れてしまいそうだった。
だから私はいつも通り、必死で顔に笑みを張り付ける。
引きつった私の口は、
ただただ、たった一言だけ伝えた。
「よ…」
「よかったねぇ…!」
泣いちゃ、駄目だ。