天使はワガママに決まってる
私の名前は、早花柚子(サハナ ユズ)。
とにかく強がってるけど臆病で泣き虫。
小学校までは、本当に大人しくて弱々しくて
毎年毎年いじめられていた。
私がいじめられる理由も、何となく分かっていた。
――人は、誰かの上にいたい生き物だから。
だから、それで他人が満足できるなら
私はもう何も考えずに生きればいいとさえ、思っていた。
でも、そんな私の毎日を救ってくれたのが
彼女だったの。
『バッカじゃないの?!』
彼女のたったその一言だけで、
私へのいじめもピタリと怖いくらいに止んだ。
それが、莉奈。
告野莉奈(ツゲノ リナ)。
私の、大親友――。
昔から莉奈は可愛くて、明るくて
本当に人気者で。
私にとって憧れの存在だった莉奈が、
私を助けてくれたときは、真剣に夢かと疑った。
でもそれからも莉奈は、
友達のいなかった私と唯一無二の親友になってくれて
ずっとずっと一緒だよ、って約束してくれて。
彼女の存在一つで、私の人生は180度転換したような、
そんな思いさえ、抱いた。
……でも、
今、私の目の前で微笑む莉奈は
私の一番望んでいなかったことを言った。
嘘だよって叫びたかったけれど
幸せそうな彼女の表情を見たらもう何も言えなくて。
自分の弱さを殴りたくても
それさえもできないくらい、私は臆病だ。
「ありがとぉ柚子~!!
柚子のおかげ!
柚子がね、俊くんとあたしを引き合わせてくれたの!」
やめてよ。
そんなこと言わないで。
「そ、そうかな…。」
「うん!さすがあたしの柚子っ」
お願いだから、もう何も言わないで。
私はスカートを強く握り締め、軽く俯いたまま
引きつった笑みを浮かべていた。
こんなにもずっと一緒にいたのに
対する莉奈は全くそんな様子にも気がつかない。