天使はワガママに決まってる
色んな想いが溢れ出てきてしまいそうで
表情一つ変えられない。
言葉一つ紡ぐのが精一杯だった。
「…いつ…?」
もう、何も聞きたくないと思っているのに
私の意に反する口は、自分の首を絞めるような言葉を呟く。
自分が自分じゃないみたい。
何も知りたくないと思っているのに
心のどこかでは気になって仕方がない。
莉奈は意気揚々と、机に腰掛けて語り始めた。
「一週間前だよ!あたしから言ってね、OKしてくれたの。」
「そっ、か。」
――”俊くん”。
冠木俊(カブラギ シュン)。
私と莉奈と同じクラスで、
中学校からずっと私が想いを寄せてきた少年。
一目惚れに近かったけれど
本当に私は彼に恋をしていた。
目が合っただけで一日中楽しくて
少し喋れただけで幸せに浸れる。
それくらい、純粋に。
ただただ一途に。
一緒の高校に行くのにも必死で勉強して
いつまでも彼を見つめ続けていた。
やっぱり私は臆病だったから、結局想いは伝えられなかったけれど
伝えられないままの片思いでも
小さな幸せを味わっていたかった。
でも今は。
それさえも、もう出来ない。
今莉奈に何か問い詰められたら
きっと何も言い返せないだろうと思う。
情けなくてたまらなくなって、
もうこれ以上泣きそうな顔を見せられないと思った。
私は小さく微笑むと、
おめでとうと言い残して莉奈の元を去る。
後ろから莉奈の声が聞こえた気がしたけれど、
もう何も聞きたくない。
「ごめん…っ莉奈…!」
こんなの”嫉妬”だ。
悪いのは全部私なのに、
どうしても莉奈のせいにしようとしてる。
ドロドロしたものが心に溢れて、私を染めてしまいそうで。
嫉妬と罪悪感が、私の心を支配していく。
悲しみのトッピングとともに。