天使はワガママに決まってる

言えなかった私が悪い。
でも莉奈よりも彼を想い続けた期間は
絶対私の方が長い。

だって俊くんと莉奈が出会ったのは、
私が紹介したからだった。

そのときはまさかこんなことになるなんて、思いもしなかった。
莉奈は大の親友なのに、これだけは絶対に言えなくて。


それなのにズルイと思う自分が
嫌で嫌で仕方がない。


「私の…ばかぁ…っ」


廊下を早歩きで吐き抜けながら、溢れる涙を必死で拭う。
周囲の生徒は、放課後だから既にまばらだった。

行くあてもないし、
鞄も持ってきていない。
でも、今教室に戻る気もしない。


「やだよ…っ!」




――気がつけば、私は屋上前の階段に来ていた。

薄暗くて埃っぽい。
屋上には厳重に鍵が掛けられていて入れないため
よく莉奈とここでサボって……。

そして、俊くんともよくここで喋った――。


今となっては莉奈と俊くんと出会わせた皮肉な場所なのに、
結局辿りついたのはここ。

私は階段に座り、膝を抱えて泣いた。

でもいざ大声で泣こうとしても、
堪えすぎた涙は出なくて
泣くこともできない自分が馬鹿みたいだった。


「うぅ~……」


呻き声だけが、誰もいない校舎に響く。


そんな、生半可な気持ちじゃなかった。
たとえ親友の莉奈が付き合うって言っても
すぐに信じられるわけがない。

でも――諦めなければならないと、
私の脳は叫んでた。


「何で…っ」


「何で梨奈なの……!!」


莉奈がもっと嫌なやつだったらよかったのに。
親友なんかじゃなかったら
私はもっと楽に、彼女を憎むことができたのに。

そんなことを考えている自分も
消えてしまいたかった。



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