天使はワガママに決まってる
黙り込む私の隣に、
有明くんはゆっくり腰かけた。
何でこんなに安心できるんだろう?
隣にいてくれるだけで、少しだけ私の心も安らいだ。
元気で明るくて人気者の俊くんとは
また違った感じだけど――
この優しさが、凄く心地いい。
「私、早花柚子。」
「ははっ…知ってる。」
「あ、そっか。」
フッ、と自然に笑みが零れる。
泣き腫らして真っ赤になった目が
熱を帯びて笑うたびに重い。
同じクラスだから知っているのは当たり前なのに
わざわざ名乗った自分が恥ずかしくて、思わず赤面。
対する有明くんは声を上げて笑った。
「…優しいんだね。」
「ん?そう?」
基本的には冷たいよ、と
また有明くんは笑った。
「早花さん、だからだよ。」
「へ…?」
言葉の意味が分からず、ポカンと口を開ける私に
有明くんは微笑む。
――さっきから私、
間抜けなところしか見せてない。
そんな私の恥ずかしい気持ちもよそに
有明くんは立ち上がった。
数段、階段を下りると、私に背を向けて口を開く。
「早花さんに何があったのかは聞かない。」
でも、と
背中を見せる有明くんは続けた。
「俺、君のこと好きだったんだ。」
「え…?」
振り返りざまの彼の顔は、
薄暗くても少しだけ赤くなっているのが見える。
「俺なら絶対早花さんのこと…
泣かせたりしないから。」
待って。
言わないで。
「付き合ってください。」
そんな真剣な顔で言われたら、
今の私になんて断れるわけないよ――