天使はワガママに決まってる

何で、喋ったこともない私を
好きになることが出来るんだろう?


そんな疑問が心に浮かんだけれど
あぁ、と一瞬で気がついた。


私も、俊くんに一目惚れしたから。


今、私の目の前で私を真剣に見つめる少年は、
決して嘘をつかないとは言えないかもしれないけど
彼を見ていると、信じてみたくなるような……
そんな思いになれる。


「私を…好きになったの…?」


小さくそう尋ねると、
有明くんはうんと力強く頷く。
どこに?と聞くと、一瞬言葉を詰まらせた。


「どこにって……分かんないよ。」


”一目惚れだから”

照れくさそうに笑って言った彼の言葉に
私の心は締めつけられた。
また、涙が出そうになって
必死にそれを堪えようと口を真横に結ぶ。


「早花さんの気持ちが、俺に無いのは分かってるけど、
 でも絶対……好きにしてみせるから……」

「俺、自分でもめちゃくちゃなんだけどさっ!
 ほんと、すっごい早花さんのこと好きなんだ。」


その優しい言葉が、その表情が
痛くて温かくて、手放したくない。

今の私には、有明くんの気持ちが
嬉しいのに辛い。


「……私、」


自分でも気がつかないうちに
無意識に口が喋っていた。

”好きな人がいるから”と続けようとしたのに、
思わず言葉がそこで詰まってしまう。


好きな人はもう――親友を愛しているから。


その事実が、私の想いを揺らがせた。


「有明くんのこと、好きになれるか分からないよ…?」


私の言葉に、有明くんの表情は
一気に明るくなった。
うん、と微笑んだ彼はそれでもいいよと
あの甘い声で言った。


「いいの…?」
「それでも、早花さんが好き。」


唇を噛みしめて、俯く。
そして私は小さく頷いた。


「お…お願いします…」

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