天使はワガママに決まってる


――きっと彼なら幸せになれるって

”俊くんの代わり”になるって


私は、信じてた――…



「俺、今日部活だけど柚子、どうする?」
「あー私、待っとくよ?」


あれから少し日は流れて、
私と祐唯の中は、少しずつかもしれないけど深まっていると思う。

毎日一緒に帰ってるし、
デートだって何回もして。

私の心も、祐唯に対して
以前よりずっと解きほぐされた気がする。


でも、それは莉奈と俊くんも同じ。
仲良さそうな二人の姿を見ると、やっぱり今でも胸が痛くなる。


それでも随分ましになったと思うのは、
きっと祐唯のお陰なんだ。


「ほんと?じゃあ俺頑張るわ!」
「あははっ!見てるから活躍してよねー」
「柚子、」


そのとき、私の肩が名前とともに誰かに叩かれた。
反射的にその方を振り返ると
何故だか真剣な表情をした――莉奈。


「あ、莉奈っ?」


祐唯に笑いかけた表情のまま、私は首を傾げた。
莉奈はうん、と小さく頷いて俯く。

ただならぬ雰囲気を感じて、
私と祐唯はさり気なく視線を交わした。


「……どうしたの?」
「ねぇ、柚子。今日一緒に帰ってくれないかなぁ…」
「へ?」


俯いたまま、莉奈は小さな声で言った。
彼女の肩に手を置いたまま、私は祐唯にもう一度視線を送る。
祐唯は口の動きで”いいよ”と呟いてくれた。


「う、うん。いいよ?」
「ごめん。ありがとう。」


いつもなら、莉奈は俊くんと
必ず一緒に帰っていたのに――

怪訝に思ったのか、祐唯が私の横で
俊は?と軽く尋ねる。

祐唯の言葉に顔を上げた莉奈の顔は、
今までに見たこともないような
切なくて悲しい顔をしていた。

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