天使はワガママに決まってる

その2人の背中をしばらく見送って、
私と夜久くんはどちらからともなく
反対方向へ足を返した。



――まさか夜久くんと帰り道が一緒だなんて思ってなかった。


心臓の音、ウルサイ。
止まらない鼓動で心拍数は上がりっぱなし。
もう早死にするんじゃないかっていうくらい、
私の中で危険信号が鳴り響いてる。

さっきまでと同じように隣を微妙な距離で歩くけれど
やっぱり会話は無くて
お互いに明日の方向を向いているような状況。


そりゃ夜久くんもそうだよ。
こんな数回しか喋ったことない女と
一緒に帰るハメになって――

何故だか彼に悪い気がして、
私の中に小さな罪悪感が芽生えてきた。


「……。」
「……。」


夜久くん…私なんかと一緒で、
きっと気まずいよね……。


そんなことを考えると、
思わず視線が下へ下へと下がってしまう。
自分のこの天邪鬼な性格を、
ここまで恨んだことは無い。


――私が紗代ちゃんみたいだったら、
もっと気軽に話せたんだろうな。


「はぁ…「……あの2人、仲、いいよな。」


思わず私の口から洩れてしまった溜め息に反応するかのように、
夜久くんが突然口を開いた。


「へ?!え、えぇうん!!そうだねっ」


その言葉に、私の声は恐ろしいほどまでに
裏返ってしまい、
夜久くんの顔がまともに見られない。

でもきっと嫌な表情をしているということは
安易に想像できた。


――もう、最悪…「ははっ…!」


え、


えぇ?


夜久くん……笑ってる?
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