天使はワガママに決まってる
「う…うそ、」
ほんと、と小さく莉奈は言った。
また泣きだしそうな瞳で、彼女は私を見つめる。
「それでも、付き合えるならいいって思った。でもね……っ」
ぽろっと一粒、莉奈の目から涙が零れる。
それを必死に拭いながら、莉奈は言葉を続けた。
「俊の部屋に入った時……っ、」
「莉奈っ!無理しないで……」
きつく制服のスカートを握りしめて、
莉奈は首を強く振る。
私は触れようとした手を引っ込めた。
「私じゃない子と写ってる写真が……何枚も飾ってあったの。」
「え…?!」
「私との写真は…っ、一枚も無かった…!!」
私は言葉を失くした。
失恋したからこそ、分かる世界がある。
今の莉奈の辛い気持が、どれほど伝わってきたか――…
でも、その写真を何故俊くんは、わざわざ見せたの…?
「同じ、子だったの…?」
「うん。どれも…。」
顔を覆い、か細い声で泣く莉奈には
いつもの元気で明るい姿はどこにもなかった。
私の憧れの莉奈は、どこにもいなくて。
恋の恐ろしさを、身に染みて感じる。
「見て…っ、突っ立ってたあたしに…、しゅ、んが…っ」
「うん…」
「”やっぱり、別れよう”って…!写真の子が、忘れ、られないって…!」
それを言うために、俊くんは莉奈を呼びだしたんだ――
目の前の莉奈が可哀想で
私はぎゅっと彼女を抱きしめた。
私の胸の中で震えながら泣く莉奈。
私の目からも、涙が落ちる。
「辛かったよね…莉奈…っ」
その言葉とともに、何かせき止められていたものが外れたかのように
莉奈はさっきよりも大きく泣き声をあげた。