天使はワガママに決まってる
泣いて泣いて泣いて。
どれだけ慰めて抱きしめても泣き止まない莉奈を見て、
本気で俊くんのことが好きだったんだって
思い知らされた気がした。
莉奈はモテる。
よく彼氏も変わっていたし、正直軽い。
だから、莉奈と俊くんが付き合うって聞いて
心の中では”すぐ別れるかも”なんて考えがあった。
そんな莉奈を見てきたからこそ、
今の弱々しい彼女が信じられなくて。
本気で恋した彼女を憎んだ自分が、許せなくて。
私も、一緒に泣き続けた。
「っく、ひっく…」
「莉奈…落ち着いた…?」
「うん…」
それからまたしばらくして、
夕日もすっかり沈んでしまった頃
ようやく莉奈の瞳から涙が止まった。
私の隣で縮こまってしまった莉奈は、
いつもの莉奈じゃないみたいで――。
「莉奈だからさっ!またいい人できるって!」
無理に明るく降るまおうと声をかけたが、
私の言葉に莉奈は首を振った。
「あんなに……っ、好きになったの…初めてだもん…。」
また、胸が痛んだ。
話を聞くたびに悲しくて悲しくて仕方がないのに
莉奈が俊くんと別れてほっとしてる自分もどこかにいて、
そんな自分がまた嫌になって――。
最近、自分を嫌いになりすぎてる気がする。
自己嫌悪ばかり…してる。
「そっ…か、」
「柚子は?」
「へ?」
「有明くんと…仲良くやってるの?」
唐突な莉奈からの質問。
一瞬言葉を詰まらせて、私は顔に精一杯の笑顔を張り付けた。
――何でだろう?
この話になると、ちゃんと笑えなくなる。
好きなのに。
祐唯のこと……好きになれたと思ってるのに。
「う…うんっ!ラブラブ…かな?」
「そっかぁ~!いいなぁ…。いつも一緒に帰ってるもんね!」
「うん…」
本当に、仲いいよね。
と、莉奈は言った。
その言葉はまるで、自分に言い聞かせるような――
私に対して、強調しているような。
そんな気がした。