天使はワガママに決まってる
「帰ろっか!ごめんね、柚子。遅くまで。」
「ううん!いいよ~!親友だもんっ」
「そ、そうだよね!あたしと柚子は……親友だもんね。」
「……莉奈?」
公園の入り口で別れを告げた私たちは、
そのまま手を振って互いの方向へ別れた。
”また明日ね”って…笑顔で。
帰り道、別れ際の莉奈の少し曇った表情が
何故だか忘れられなかった――…
その次の日。
莉奈は学校に来なかった。
心配して早退して莉奈の様子を見に行こうとしたけれど、
先生が許してくれなくて……
もどかしい思いを抱いたまま、学校は昼休み。
「…はぁ…」
「どーしたんだよ?溜め息なんて吐いてー。」
「あ…祐唯。」
ふいに後ろから叩かれた肩。
その人物は予想通り…祐唯だった。
いつもの優しい表情に、少しだけ心が安らぐ。
「…どうかしたの?」
私の暗いオーラを読み取ったのか、
祐唯は心底心配そうに私の顔を覗き込む。
心配の種は莉奈ということは、きっと分かっているだろうけど
莉奈が休んだ原因は言えなかった。
「ううん…大丈夫。」
「放課後、告野の家に行くんだろ?」
「うん。」
「何かあったら…すぐ、言ってきて。」
祐唯も心配してくれているんだ。
彼と一緒にいると、何だか色んな事が大丈夫な気がしてくる。
わたしはありがとう、と微笑んだ。
この笑顔は嘘ではないよね…?
肩に置かれた祐唯の手を、小さく握ったとき
ふいに教室の私たちとは反対側で
女の子たちの会話が耳に入った。
「俊ってさぁ~莉奈と別れたんでしょ?」
「あーらしいねー。今日莉奈、来てなくない?」
「ショックだよ~そりゃ、ねー。」
「だって、俊って…」
「柚子のことが好きだったんだもんね。」
動きが止まった。
私が呆然と見ているのに気が付いていない様子の彼女たちは、
そんな噂話を周囲を気にせず続ける。
ちらりと背後の祐唯に視線を送れば
彼は「どうしたの?」と何も聞こえていない様子で
私は心の中で安堵した。