天使はワガママに決まってる
けれどそれからの私は
もう平常心を保つことなんてできない。
ただ黙って、今すぐ彼女たちに話を聞きに行きたい衝動を
祐唯がいるから、と必死で抑え込む。
その間も、祐唯は私に楽しそうに
部活での話やテレビの話をしてくれているが
ほとんど耳を筒抜けていて、
私の頭にこだまするのは、さっきの言葉。
”柚子のことが好きだったんだもんね”
待ってよ。
それじゃあ、何で俊くんは莉奈と付き合ったの?
莉奈の告白にOKって言ったの?
そのとき、ふと一つのことがよぎった。
昨日、莉奈が言っていたこと。
俊くんに別れようって言われた。
そして――写真を見せられた。
『この子が忘れられない』
と。
もし俊くんの本当に好きな人が私ならば
写真に写っていたのは――…私。
そう考えた瞬間、胸がギュッときつく締めつけられる感覚に襲われた。
今までの比ではないくらいの、強い痛み。
昨日の莉奈のおかしな様子――…
”親友”という言葉への、明らかな戸惑い。
何かが、確信へと変わった。
本当にそうならば、莉奈はきのう
一体どんな気持ちで私にあの話をしたんだろう。
悲しくて、悔しくて、憎くて憎くて仕方がないはずなのに
私に全てを話してくれた。
一緒に――…泣いた。
「莉奈…」
心臓が、痛い。
動悸が早まる。
莉奈は、もし事実を言ったら私が困ってしまうことを分かっていたんだ。
だから。
私を悲しませないように、何も言わなかった。
事実を聞いた私は、一体どうしただろう?
驚きながらも、心の中では喜びで満ち溢れてしまっていたかもしれない。
――現に、実際今、そうだから。
莉奈の気持ちを想うと、苦しくて
今にも泣き叫びそうになる。
もしかしたら、莉奈は――私の俊くんに対する気持ちを、
いつの間にか感じ取っていたのかもしれない。
だから莉奈は、わざわざ私にあんな話をしたんだ。
憎しみの対象であるはずの――私に。