天使はワガママに決まってる
「応援…してるの…?莉奈…っ」
「え?柚子……?」
祐唯の問いかけに、私は答えられなかった。
胸を抑え、涙を浮かべる私を見て
目を丸くする祐唯。
ごめんねと言いたくても、それさえ言葉にできない。
「大丈夫?!お、俺…何か言ったかな?!
体調悪いとか?保健室行く?!」
私の目の前であたふたする祐唯のその提案に
私は小さく頷いた。
体調は決して悪くないが、保健室で一人になりたかった。
「う…うん…。ごめん、連れて行ってくれる…?」
「お、おぉ!俺の腕に掴まって!」
「うん…ありが、と」
祐唯の腕に掴まって、ゆっくりと教室を出ていく。
周囲の生徒は驚いたようにこちらを見ていたが
そんなもの何も気にならない。
ただ溢れる涙を、どうにかしなければならないと思った。
「うっ…うぅ…っ」
「大丈夫かよ柚子!」
まだ心臓が痛くて、涙が出た。
ようやく保健室に辿りついた時には
昼休みは終わってしまっていた。
祐唯に申し訳ないと思いつつ、保健室に足を踏み入れる。
そこには先生も誰もいなかった。
ごめん、と一言弱々しく謝って
心配してくれている祐唯を保健室から追い出した。
今は一人になりたい。
祐唯は私の気持ちを察してか、静かに保健室を後にした。
「はぁ…。」
莉奈のことが頭を巡る。
何で莉奈は、わざわざあんなことを言ったのだろう。
自分の気持ちを殺してまでなんて――
彼女には似合わない。
保健室のベッドに腰かけて
何度も溜め息を吐く。
やたらとその溜め息は大きく聞こえた。