天使はワガママに決まってる
しかしそのまま出ていくのかと思い、
息を吐こうとしたとき
突然一人の男子が「あっ」と小さく声を上げた。
「そーいや俊…」
ついで、といった様子で
軽々しく発された言葉。
大した内容ではないのだと思いつつ、
何故だか耳を澄ませてしまう。
「お前、何で莉奈と別れたんだよー」
ドキン、
心臓が一瞬、強く波打ったような感覚がした。
そうそう、ともう一人の男子もその話に乗り気で
軽い相槌を交わす。
噂なのだから私が関係していることはあり得ない――
と考えても、気になるものは気になる。
私自身も、あやふやな噂などではなくて
俊くんの本当の言葉が聞きたい。
莉奈が泣いた理由。
写真の相手。
真実が、聞きたい。
「莉奈、結構いい女なのにな。」
「俺、さり気なく狙ってたのにさー。」
無神経な彼らの言葉に、私までムッとしてしまう。
俊くんが今一体どんな顔をしているのかは
こちらからは見えないが――……
「んー…俺さ、他に好きなやつがいるんだよ。」
気だるそうながら、いつもよりも小さな声で答えた俊くん。
その答えは、嬉しいような苦しいような…
まだ私だと決まったわけでもないのに
また胸が苦しくなる。
「は?!誰だよー教えろって!」
「つか、好きなやついるのに告野と付き合ったのかよ。」
まるで核心を突くような質問。
まるで私の聞きたい望みを反映しているようだった。
思わずゴクリ、と唾を飲み込む。
「あー……」
早く。
「っと…、」
「何だよー早く言えって。」
「俺、」
――早く…!