天使はワガママに決まってる
「柚子が好きだから。」
躊躇いもなく、カーテンを隔てた彼は言った。
私の名前を、言った。
他の2人が「え?!」とあからさまに驚く声が聞こえる。
確かに驚くのも無理はない。
私なんて……男子から見れば、
莉奈に付いてる”おまけ”みたいなものだから。
「柚子って…早花柚子かよ?!」
「あぁ。」
「何でそっち……いつから?!」
「中学ん時から。」
聞くたびに、やっぱり胸が締め付けられて
”聞かなければよかった”なんて後悔し始める。
シーツを掴んで、耳を塞ぐこともできたのに
何故私は――痛い道を選んだのだろう。
ギュッと唇を噛みしめた。
――もう、決定した。
莉奈が見た写真に写っていたのは――私だ。
別れ際の莉奈の辛そうで、
私の言葉にはっきりしない返答も。
全部全部、私が原因だった。
私がもし莉奈だったら、きっと私もあんな態度をとっていただろう。
だから彼女を責められるわけがない。
俊くんをとられた――と思うだろう。
それも仕方がないのだ。
私たちの関係は、やっぱり近すぎて
憎めるような距離ではない。
だから莉奈は、あっさりと身を引いた。
「アイツ…莉奈に言われたんだよ。
”柚子、彼氏が出来たみたいだから私と付き合おう”って。」
「――…で、ガラにもなく傷ついた俺は
莉奈と付き合うことにした…ってわけ。」
そこで俊くんはハァーと大きく溜め息を吐いた。
2人の男子は何も言えないようで
呆然と突っ立っている。
私も一瞬、呆然としてしまった。
何故なら私は、莉奈と俊くんが付き合う前に
祐唯と付き合うことになったわけではないから――
莉奈は、俊くんに嘘を言ったのだ。
(莉奈……)