紅芳記

ふじに聞いたところ、猫はやはり雌で、名は波姫に決まりました。

殿は上洛の前に波姫の首輪と鈴をご用意くださったようで、出発の見送りをするおりに波姫につけて下さいました。

今頃殿は京に着いたでしょうか。

その寂しさも、波姫がいることで半減します。

早くお帰りください…。

殿…。

愛しいと、愛するという感情を知ってから貴方と離れるとは、なんと淋しいことでしょう…。


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