紅芳記
ある日、私が城内を歩いていると侍女たちの会話が聞こえてきました。
「殿が側室を?」
「家臣の方々や大殿が強く薦めているらしいわ。
真田存続が第一だって。」
「で、殿は?」
「相当悩んでるみたいだけど、側室を置いた方がいいとはお考えみたいよ。」
「え?
じゃあ、侍女の中から側室になれる可能性もあるってこと?」
「馬鹿。
大殿が薦めているのよ。
何処かの家の姫でしょう。」
「それもそうね。」
侍女たちは楽しそうに話しておりますが、私はその場から動けなくなってしまいました。