紅芳記
伍.小田原征伐
春、弥生のはじめ頃に殿に呼ばれてお部屋に参りました。
殿はひどく難しいお顔をされ、何事かとおもい、殿のお傍により
「殿、如何されました?」
と尋ねました。
「あぁ、小松か。」
「かように難しいお顔で。
なにかございましたか?」
「……戦じゃ。」
戦…。
「左様にございますか。」
「あまり驚いておらぬようじゃな。」
「いえ。
驚きすぎてなんと申したものかと。
して、どことどこの戦にございましょう?
殿も出陣なされるので?」
「豊臣と北条じゃ。
ついに秀吉殿は天下を取りに行かれるおつもりじゃ。
わしも、父上とともに北国勢に加わるようにとの沙汰があった。」