紅芳記
夢姫様…いえ、お夢殿に昔の思い出話などを話し、お夢殿の昔話を聞いて笑いあっているうちに、日が傾いて来ました。
お夢殿の笑い顔には、何処か殿の面影があり、お二人は間違いなく血の繋がった従兄妹なのだと思いました。
更に、控え目でありながらとても面白いお話をしてくださる所などはきっと、大殿や信繁殿の血なのだとわかりました。
大殿も信繁殿も、とても面白い方で、正直、お優しく温厚な殿とは似ても似つかないのです。
きっと殿のご性格はお母上様である、京の御前様に似たのだろうと思われます。
「大分日も傾いて参りました。
私は、これにて失礼つかまつります。」
「そうですか…。
また、いつでもいらして下さいな。
楽しみにしております。」
私がそう笑うと、お夢殿も
「折につけお伺い致しますわ。
私も、奥方様ともっと仲良くなりとうございます。」
と笑われ、
「それでは。」
と、深く一礼して退出なされました。