紅芳記
「私としては、願ってもないお話にございます。」
「…すまぬな。
一度、里に帰ったそなたに今一度仕えよなどと…。」
「いえ。
里には家族といえる家族もおりません。
まことに有り難いことと、存じまする。」
「ありがとう。」
お世都がいるということは本当に心強い。
「奥方様、お部屋のご用意が整いましてございます。」
「わかった。
そうじゃ、ふじ。
世都はこの後も侍女として仕えてくれることと相成った。
そちらのほうも、抜かりなくいくようにしておいて。」
「はい。」