紅芳記
殿に抱かれて、だんだん眠たくなって参りました。
ん…?
髪に誰かが触れている。
殿が手で梳いて下さっているのかしら?
髪を梳かれることがこんなにも心地好いなんて知らなかったわ。
でも、なぜかしら。
…心の臓が苦しい。
涙が出てきてしまう。
…………だめ。
殿に悟られる前に寝てしまおう。
私は結局無理矢理寝入ってなんとか涙をごまかしました。
「小松…」
殿の苦しそうな声を聞こえなかったことにして。