紅芳記

「世都、義兄上をお呼びしろ。」

平八郎は静かに世都に命じました。

「なっ…!
何故でございますか!?
私は殿に露見しては一大事と思い、一人でお迎えに参りましたのに!」

「姉上はこうなっては聞く耳を持つことはない。
義兄上に来て頂くのが一番。」

「は、はい。」

「行くな。」

私は平八郎に従おうとする世都を止めました。

「しかし…」

「行け、世都。
そなたが行かぬなら徳川家の忍びに行かせるが、それでも良いのか?」

「…承知。」

徳川を巻き込むことを避けるため、世都は私を無視して真田屋敷に戻りました。


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