紅芳記
侍女達が唖然としている中私は着物を整え、
「夢殿は大方、物の怪にでも憑かれたのであろう。
何処かにお祓いに行き、湯治をして頭を冷やされるが良い。
香登、手配を。
それからそち達は二度とこのようなことが無いよう、しかと目を光らせておれ。
主のかような姿、もう見とうなかろう。」
私は床に投げ飛ばされて意識の遠退いた夢の御方様を横目に、侍女達に指示を出しました。
「しかと、承りましてございます。」
香登は深く頭を下げながら言いました。
夢の御方様の侍女たちはバツの悪そうな顔をしながら平伏し、この一事件は一旦幕を引きました。