紅芳記

散々三人に笑われ、少しばかり落ち込んでおりましたら、夕方頃に夢の御方様が目通りを願われてきました。

「奥方様…。」

香登は心配そうに言いました。

「大事ない。
御方様をお通ししなさい。」

私が沼田について十日後、城に着いてふじや仲橋が夢の御方様のことを知り、二人に『なんとはしたないことを!』とこっぴどく叱られてしまいました。

「失礼いたします。」

夢の御方様はとても柔らかいお声になっておいででした。

「お目通りをお許しくださり、ありがとう存じまする。」

夢の御方様は深く頭を下げられました。

随分とお痩せになってしまわれて…。

私はこの姫君を哀れに思いはじめました。


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