紅芳記

「驚かないでと言ったのに…。」

私は小さく溜息をつきました。

「だって、お屋形様って、あの家康さまのことでしょう?
すごい…!
姫さま……!」

おなみは、私に抱き着いてきました。

「きゃっ!
お、おなみ!?」

「…あ!
お許しくださいませ!
とんだ無礼を…。」

おなみはすぐに平伏しました。

「いえ、いいのよ。
早く顔を上げて。」


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