紅芳記
私は見かねて、
「如何致した。」
と、侍女に尋ねるました。
「はい、姫君様が御到着になりましたのですが…」
「まあ、もう?」
予定より少しばかり早うございます。
「わかりました、私がお伝え致す故、下がってよい。」
「忝のうございまする。」
侍女が下がったのを見て、私は急ぎ四人の許へにじり寄り、
「義父上様、義母上様、殿、源次郎殿。
利世殿はもう御到着遊ばされましたようです。」
とお伝えしました。
「では、源次郎!
参りますぞ。」
そうおっしゃいます京の御前様は武将のような御有様です。
「はい…。」
源次郎殿はげんなりとされていますが、利世殿に会うのは楽しみのようです。