紅芳記
拾.世継ぎ誕生
沼田城に着き、家臣の挨拶を受けようと広間に向かう最中のこと。
「うっ…」
吐き気が込み上げ、思わずうずくまりました。
気持ち悪い…。
「小松!?」
倒れ込むようにうずくまったため、殿が支えてくださいました。
侍女たちも私に駆け寄ります。
「如何した!?」
「き、気持ち悪う、ございます…」
「何じゃと!?
医者じゃ、急ぎ医者を呼べ!!」
「は、はい!!」
ふじは慌てて医者を呼びに行きました。
「歩けるか?」
殿は優しく声をかけてくださいますが、私は気持ち悪うて答えられません。
殿は私を抱き上げ、部屋までお連れくださいました。
「小松、しっかり致せ!!」
褥の上に降ろされます。
「お医者様にございます!」
ふじが連れてきた医者に診てもらうため、一度、殿を含めた全員が下がりました。