紅芳記

医者に診てもらった後、殿たちが部屋に戻られました。

「小松はどうなのじゃ!?」

殿はいつもの冷静な様子は微塵もなく、汗を浮かべて医者に問います。

医者はニヤニヤとし、それが余計に殿を苛立たせています。

私はその様子が不安で、殿をじっと見つめておりました。

「答えよ!」

医者は一つ咳ばらいをして、再び微笑み、

「おめでたでございます。


ご懐妊でござりまする!」


と告げました。



ご、懐妊…?



刹那の間、時が止まったように感じられました。


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