紅芳記
医者の言葉が頭の中で繰り替えされます。
──ご懐妊でござりまする!
ご懐妊…。
「小松っ!!」
殿にひしと抱きしめられました。
「ようやった!
ようやってくれた!!
わしの子じゃ…。
わしと、そなたの子が出来たのじゃ!!」
「子…。
私と、殿の、お子…?」
「そうじゃ…。
そなたの大手柄よ!」
「まことに…?」
「まことである。」
「ようやく、お子を授かったのでございますね…。」
嬉しい…。
一筋、涙が流れる。
殿の抱きしめる強さがましていきました。
「と、殿…。
苦しゅう、ございます…」
私がそう言うと、殿はパッと腕を離され、
「すまぬ…」
と詫びてくださいましたが、その表情は泣き笑いという感じで、愛しさが込み上げてきます。
「義父上様、義母上様にお伝えせねばなりませぬな。」
私は微笑みながら言いました。
「家臣たちにもな。
沼田に戻ったばかり故、労をねぎらわねば。」
「そうですね…。」