紅芳記

「…おなみは、その方と一緒になるつもりなの?」

私がそう聞くと、

「はい…。」

と言いました。

そのときのおなみは、私が知る限り今までで1番美しい笑顔でした。

「ところで、その方はなにをなされているの?」

「それが…。」

「それが?」

「京で商いをなされているとお聞きいたしました。
それも、私の家と同じ染物だそうにございます。」

私はそれを聞いて嬉しくなってしまって、おなみの手をとり、

「よかった!
おなみ。幸せにね…!
本当によかった……。」


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