紅芳記

「これは、ご丁寧に。」

そして、軽い会釈をした後、駿河御前さまは上座にお座りになられました。

「小松姫、浜松城どうじゃ?」

「はい、大変に素晴らしいお城にございます。」

「そうじゃのう…。
…して。」

駿河御前さまは一瞬、お寂しそうな顔をして、

「姫はお屋形さま…、家康さまのことをどう思う?」

「と、申しますと…?」

「私は、ここだけの話、お屋形さまが苦手なのじゃ。」


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