紅芳記

「はい。
奥方さまは以前…、お屋形さまに嫁がれる前、尾張のお方に嫁がれたのでございます。
仲睦まじい夫婦であったそうにございます。
しかし、奥方さまの兄上であらせられる秀吉さまがご出世され、お屋形さまと対立されました。
そのため、徳川と豊臣があらぬ戦を避けるために、奥方さまは泣く泣く、お屋形さまに嫁がれたのでございます。」

「そんなことがあったのですか…。」

愛する夫から引き離された義母上さまは一体、どのようなお気持ちで義父上さまのもとへ嫁がれたのでございましょうか。


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