零の狼-新撰組零番隊-
徒歩で、組長から指定された神社へと向かう。

…私が今いる場所は歓楽街の大通りを一本外れた裏路地。

華やかなメインストリートを離れると、不穏な空気さえ漂う暗闇に包まれた通りだ。

婦女子が一人歩きする場所ではない。

まぁ、私は『婦女子』ではないが。

新撰組零番隊隊士の制服である羽織を纏ったまま、歩く。

たまにすれ違う者達が、好奇の視線で私を見る。

段だら模様の羽織を纏って、こんな時間に一人歩きする娘。

不思議に思って当然だろう。

しかし、誰も声をかけようとはしない。

かけられはしまい。

私がその身より放つ独特の気配。

近寄り難い雰囲気。

例えば婦人警官が一人で歩いていたからとて、声をかける一般人はいまい。

私に対して向けられる視線も、同様のものだった。

< 13 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop