零の狼-新撰組零番隊-
境内の中央辺りまで踏み入った頃だろうか。

ガサリと。

木の葉か、茂みか。

とにかくそれらしきものを踏み締める音がした。

立ち止まる。

振り向きはしない。

表情にも変化を表す事なく、私はただ棒立ちのまま。

…足音の主も、それ以上、声を発する事もなく、物音を立てる事もなく。

「…新入隊士の者か…?」

こちらから声をかけてみる。

…静寂の暗闇の中、返答はない。

代わりに。

チキッと。

刃を一寸抜くような音が、微かに耳に届いた。

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