零の狼-新撰組零番隊-
反射的に振り返る。

同時に腰の小太刀を抜刀して、切っ先を背後へ。

「っ…と」

間の抜けた声が闇の中から聞こえた。

漆黒の中、私は能面のような表情のまま見据える。

…若い男が立っていた。

黒革のズボンに同色のブーツ。

上半身は何も纏わぬ素肌のまま。

しかし、細身ながらもその体は引き締まっていた。

労働やスポーツによって鍛え込まれた筋肉の付き方ではない。

恐らくは戦闘に特化した筋肉…。

端正な顔立ち。

どこか色気さえ感じさせる切れ長の目は、私を見つめたまま僅かに細まる。

…偶然この場に居合わせてしまった一般人ではない。

私は即座に直感した。

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