零の狼-新撰組零番隊-
小太刀の切っ先を喉元に突きつけられたままだというのに、男は動揺した様子はない。

それどころか。

「へぇ…女か…」

そんな軽口を叩く。

零番隊唯一の女隊士。

そう言って愚弄してきた者を、私はことごとく叩き伏せてきた。

柄を握る手に力がこもる。

しかし次の瞬間。

「!」

私の小太刀が下段からの切り上げで跳ね除けられた!

この男、得物を持っている?

咄嗟に飛び退き、距離を置く。

「いい反応だ」

薄笑みを浮かべる男。

その手には、白木の鞘に納められた刀剣が携えられていた。


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