零の狼-新撰組零番隊-
こんな得物を手にしているとは、この男はヤクザ者だろうか。

ただのチンピラにしては、身に纏う空気が違う。

堅気を脅迫して小銭をせしめるような小者にはない、『本物』の凄みのようなものが感じられる。

「貴方は…何者ですか」

抑揚のない声で問いかける。

「月並みな台詞で返した方がいいのかい?」

ニヤリと笑みを浮かべる男。

成程。

人に名前を尋ねる前に自分から名乗れという事か。

しかし私は非公式の部隊の隊士だ。

おいそれと名乗る訳にはいかない。

素性も知れない人間が相手ならば尚更だ。

< 19 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop