零の狼-新撰組零番隊-
第二幕
逆手に握った小太刀を構え、左手を大きく突き出して間合いをはかる。

腰は低く落とす。

対する男は、長ドスを抜きもせず、棒立ちのままだった。

「……」

『抜かないんですか?』

視線のみで、男に訴えてみる。

男は私の視線を軽くいなす。

薄笑みすら浮かべて。

まぁいい。

この男が抜かずに斬られようが、抜いて斬られようが、私には関係のない事だ。

新入隊士との待ち合わせの場に居合わせた。

そして新撰組零番隊隊士である私に刃を向けた。

私がこの男を斬る理由は、それで十分だった。

< 21 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop