零の狼-新撰組零番隊-
認めよう。
その動体視力は優れている。
日夜斬り合いに明け暮れる新撰組零番隊隊士の剣を、こうも鮮やかにかわし続けられる者は、そうはいない。
かの剣豪・宮本武蔵は、額に飯粒をつけ、自ら間合いを調節して、弟子に振るわせた刃に飯粒のみを斬らせる事ができたというが、この男も或いは…。
しかし。
再び男と対峙したまま、私はチラリと、彼の握る長ドスを見やる。
『抜かないんですか?』
視線で問いかけるのは二度目。
これほどの使い手である男が、その視線に気づかない筈がない。
「…何だい…そんなに抜かせたいのかい…?」
癇に障る笑みが、更に満面の笑みへと変わった。
その動体視力は優れている。
日夜斬り合いに明け暮れる新撰組零番隊隊士の剣を、こうも鮮やかにかわし続けられる者は、そうはいない。
かの剣豪・宮本武蔵は、額に飯粒をつけ、自ら間合いを調節して、弟子に振るわせた刃に飯粒のみを斬らせる事ができたというが、この男も或いは…。
しかし。
再び男と対峙したまま、私はチラリと、彼の握る長ドスを見やる。
『抜かないんですか?』
視線で問いかけるのは二度目。
これほどの使い手である男が、その視線に気づかない筈がない。
「…何だい…そんなに抜かせたいのかい…?」
癇に障る笑みが、更に満面の笑みへと変わった。