零の狼-新撰組零番隊-
瞬間、男の右手、肘から先が消えたように見えた。

抜刀。

いや違う。

この速度は、居合い!

そう思った瞬間には、既に男の長ドスは抜き放たれていた。

日本刀よりは若干刀身が長いだろうか。

月明かりのない漆黒の夜に、それでも鋭い輝きを放つ刃が、私の鼻先目掛けて切っ先を突きつけてくる!

回避は間に合わない!

「……っ!」

微かに噛み締めた歯の間からこぼれる声。

私は咄嗟に男の居合いを小太刀で受け太刀するのが精一杯だった。

ギィンッ!

鉄と鉄が交錯する甲高い音。

一瞬の交錯の後、境内は再び静寂に包まれた。

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